配置/間取り


[超高性能2世帯住宅]
 

計画をまとめる




快適な家とするために、最も適正な建物の配置や間取りを決めていきます。
基本方針で考えた、様々な問題に対する対応がなされているか、確認をしながら進めます。
基本方針がしっかりとしていると、プランを考えるときに迷いがなくなり、おのずと最適な形に導かれていきます。

【敷地】

何ヶ所かの候補の中から最終的に決定した敷地です。

  • 敷地面積 127.38m2(38.53坪)
  • 建ぺい率 60%
  • 容積率 200%

旧宅からそれほど離れておらず、駅から徒歩10分程度に位置しています。
突き当りが行き止まりの位置指定道路(私道)に面していて、交通量の多い幹線道路から離れた公道に接続しています。
周辺は住宅やアパートが多く、静かで住みやすい場所です。
2世帯が住む住宅の敷地としては少々せまい感がありますが、騒音・振動・交通渋滞などの諸問題を解決できることと、駅までの距離や子供の通学、私や妻の通勤、敷地にかけることのできる金額などを検討の結果、この土地に決定しました。

【配置】

狭い敷地を選択したのには、なるべく建物に予算を使いたいという理由もありました。
コンパクトカー2台を駐車して、可能な限り建物の面積を取れる配置を検討するため、図のようなスケッチを作成しました。
上段のように、敷地左右に車を配置すると延べ面積144.10m2(43.60坪)となり、下段のように2台を並べた配置とすると延べ面積142.86m2(43.21坪)となります。
縦列駐車なども検討しましたが、車の出し入れのしやすさ内部の有効な面積を少しでも多く確保間取りの自由度などを考慮した結果、図上段の配置を選択しました。

【間取り】

1階

最終的な間取りです。
居室:オレンジ
収納:緑
水場:青
玄関・階段:紫

面積などは「住宅の概要」を参照してください。

2階
小屋裏収納

間取りを考えるときには建物の断面を想定し、エアコンの風の流れや、屋根・天井・建具の関係、梁下と天井高さの関係などを同時に検討します。
そのため梁のかけ方や梁の高さ、設備配管の仕方を考えながら間取りを作っていかなければなりません。

1階

主に両親の生活スペース(LDK、寝室、トイレ)と共用スペース(玄関、洗面脱衣室、浴室)

2階

我々世帯のスペース(LDK、寝室、子供室×2、トイレ)

小屋裏収納

家じゅうの長期収納物(ひな人形、五月人形、写真、工具、非常用品、空き箱など)を収納していて、一部私の趣味のスペース

この家は全体的に廊下のないプランになっています。
廊下をなくすことでドアを開け閉めする回数が減るので、移動がスムーズになるほか、椅子座の生活とすることで活動的になります。
部屋の広さを感じさせつつ、通路としてのスペースを確保して、動線が明快になるようなプランとしています。

1階LDKから玄関の眺め

玄関とリビングの出入りにはドアを設けておらず、冬は暖かく、夏は涼しい、部屋と温度差のない玄関となっています。
目隠しに飾り棚を設け、鉢植えや装飾品などを置くことで視線を遮ります


2階LDK2と階段の通路となる6畳ほどのフリースペースには、家族で共用できるパソコンや本などがあります。
小屋裏へはここから梯子を登っていきます。
小屋裏へ本を持ち込んで、くつろぎながら読むことができます。

2階フリースペース
フリースペースのカウンター

季節物や長期保存する物のための小屋裏収納は、物の入れ替えをするためのスペースや、2階の個室へのエアコン空気の通り道を確保するため、法規的にぎりぎり可能な限りの広さを確保しました。
以前の家で使用していた簡単なローソファーを持ち込んで、家族から少し距離を置いて仮眠をしたり、音楽を楽しんだりもしています。
息子はここでスマホゲームをするのがお気に入りのようです。居間とつながっているので、たまに上から会話に加わったりします。

小屋裏収納
正面のエアコンから2階を冷房

廊下をなくすことで上記のようにメリットがありますが、反面デメリットも出てきます。そのデメリットと対策について触れてみたいと思います。

1.音漏れ
高気密住宅は非常に音が響きます。
外の騒音が聞こえにくくなるため、室内で発生する音が余計に気になることがあります。
1階LDKと2階LDKはドアや壁で仕切られることなく、階段で繋がることになるので、テレビの音漏れには特に考慮しました。
テレビの設置場所をできるだけ階段から離し、音が直接階段に向かわないような向きで設置することで対処しています。
トイレの音も廊下によるワンクッションがなくなるので、リビングから遠い場所に配置して壁には吸音材(グラスウール)を入れることで対処しています。

2.冷暖房をしなければならない面積が増える
全館空調を目的としているので、これはむしろメリットと言うこともできます。
家全体の空気をまんべんなく回して各室の環境を一定に保つには、廊下はないほうが都合がいいのです。
高断熱高気密なので全館空調としても、電気代は低断熱で個別空調をしている家庭とほぼ変りません。

3.プライバシーの確保が難しい

基本的に家族のだれにも顔を合わせず部屋まで行かなければならないことなどないので、寝室や子供の部屋などはドアで仕切られていればプライバシーは保つことができます
1階を使用する両親は、お互い独りになりたいときは、父は寝室、母はリビングにいることが多いようです。
また1階の両親の寝室にはそれぞれのベッドの間に高さ1500mmの仕切りを兼ねた棚を設置しました。

4.トイレや脱衣室への出入りが見えるのが気になる
リビングからはなるべく見えない位置に配置して、家具や照明器具などで視線を遮ることで気にならなくなります。
ドアの見える位置まで移動すれば、ドアの小窓の明かりで誰かが使用中であることも分かるので、廊下に出ることなく使用状況を確認することができます。

1階LDKからの眺め

左のドアは寝室1へのドア。その奥にトイレのドアがある。
右は脱衣室のドア。

2階LDKからの眺め

ここにトイレがあるとは思わない意外性のある場所。手前にエアコンスペース、梯子があるため気になりにくい。小窓の明かりで使用状況が分かる。テーブルにつけば視線に入ることはない。

トイレのドアを開けてみる

ドアを開け放しても便座が見えず、アクセントカラーの壁でトイレであることに気付きにくい

開発による移転で退居の期日が決められている中、開発の計画決定が遅れに遅れて、移転先の敷地決定から着工まで非常に時間が限られる中で、我ながらよくまとめ上げたプランだと思っています。
もちろん、もっと手をかけたかった部分などもありますが、それは次への課題としておきます。

【エスキース】

最終プランに至るまでのエスキース。
敷地に対して車と建物の配置を決定すると、建物へのアプローチがおのずと決まり、部屋の構成も考えやすくなります。

(1)

車2台を東西に分けて駐車した時に、希望の室数を確保できるか、ボリュームをチェックすために取りあえず部屋を配置してみました。

(2)

東側に2台を並べて駐車したときのボリュームチェック。

(3)

(1)(2)で必要な部屋数を確保できることが確認できたので、廻り階段を直階段にして検討したものです。
直階段にした方がプランをまとめやすく、1階はほぼ最終プランに近い形になっています

(4)

(3)のプランをもとに階段を少し修正して、より良い間取りを検討しています。

(5)

来訪者は道路を東側から来ることになるので、玄関まで到着する前にLDKから来客を確認したいという父の意見により、建物を東西反転させました。
2階のLDKを南側に配置することで、2階の間取りがしっくりくる形となりました。
また8帖の広さを確保していた2階寝室を、寝るだけの部屋と決め6帖とすることでホールが広がり、魅力のある共用スペースとして利用できるようになっています。
この段階で小屋裏収納のイメージが明確に出来上がり、利用可能面積の検討もしています。
また1階の両親の寝室からトイレへの動線と、2階から洗面・脱衣室への動線を優先したプランになっていますが、トイレの出入口の形態や玄関から階段への動線がLDKを横切らなければいけない点に大きな問題がありました。

(6)

(5)の問題点を解決するために、階段の方向と位置を修正しました。
1階キッチンが洗面・脱衣室への動線と重なりますが、使用する時間帯が異なるため問題ありません。
1階トイレの出入口は階段の登り口と重なるため最後まで迷った部分ですが、最終的にこの形で決定しました。時間的制約がなければもう一歩踏み込んで解決しなければならない部分です。
ここまで決まると細部を検討していく段階に入ります。家具や窓の配置、屋根の形状などを考えながら微調整します。
この段階で断面も検討していて、床下エアコンの仕組みや小屋裏を利用した補助エアコンの使い方のイメージなども明確になってきました。

【CGでイメージを確認】

プランが決まったら、CADを使い作図をしながらCGパースで細部を確認して、完成のイメージに近づけていきます。

1階TVボードの検討

2階TVボードの検討

スケッチ
スケッチ

CGパース
CGパース
完成写真
完成写真

材質や板厚などの細部まで決めて丁寧にCAD入力することで、かなり現実に近い空間をシミュレートして確認することができます。
設計段階でここまで作りこんで確認しておくと、工事中の設計変更はほとんどありません。


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