家づくり

住宅の床の断熱

現在進行中の現場で、土台・大引の施工が始まったので床断熱について……
住宅の床下の断熱の方法は、大まかに基礎断熱と床断熱に分かれますが、今回は床(根太レス工法)断熱での土台や大引きの木材部分の熱橋による熱損失について考えます。

【床下地材の熱橋】

根太レス工法の床の断熱は、大引きや土台の間にスタイロフォームなどを挟み込んで敷き詰める方法が主流かと思います。「根太レス 床断熱 スタイロフォーム」のキーワードで検索するとこんな感じです。
この方法だと断熱材のない大引などの木材部分が熱橋になって、暖房時は室内の熱損失につながります。

断面で見ると大した影響がないように見えますが、根太レス工法の大引は床一面格子状に組まれるため、大引き部分からの熱損失はバカにできません。
6畳間の内、土台・大引にあたる部分の面積比を計算してみました。

上図から、6畳 9.94m2 のうち熱橋となる部分の合計は 1.97m2 となって、部屋の床面積の 19.82% の部分が熱橋となっていることになります。大引き部分だけでも1.30m2 にもなります。
幅 9cm ほどの細い大引ですが、面積にすると6畳の部屋に対して1.30m2 もあるのが意外ではないでしょうか。
6畳が6部屋あるような平面では、9.94 ×6部屋 = 59.64m2 に対して大引部分だけでも 13.08% = 7.80m2 もの面積が熱橋となるのです。

【床下地材の熱橋の対策】

東北・北海道地域などでは大引105mmにはめ込む床断熱105mmでは十分な断熱の効果を得ることが難しいということで、新住協では150mmの床断熱を推奨されていてマニュアルにも記載されています。
床断熱工法では床下に外気を取り入れて換気をするので、関東においても150mmで断熱をしていると寒い冬も安心です。

この方法であれば、十分な床下の断熱効果を得ることもできて大引き部分の熱橋対策にもなります。
神奈川県の中央に位置する我が家でもこの方法で断熱していますが、真冬でも1階床の表面温度が部屋温度-2~3度程度を保っています。床暖房のように暖かいわけではありませんが、靴下1枚で歩いても冷たく感じることはまったくありません。

2020/4/29の記録です。
室内温度は25.4度。
室外温度は15.0度

画像が小さくて見にくいですが、
床の黄色い部分が25.4度、
壁柱の下部が24.4度、
大引の部分が24.8度
となっています。

関連:階間エアコンのQ1.0住宅(冬)>各部の表面温度
しかしながらこの工法は基礎パッキンの通気を妨げなように、基礎付近をふさがないための細工をする必要があります。床の断熱を高めて熱橋の対策もして通気のための細工も不要な方法として、今回は次のような納まりを考えました。

120mm×120mmの土台を回し、90mm×90mmの大引きを掛けます。
土台高さと同じ120mmの厚さの断熱材を大引の間に挟み込みます。土台の下端と断熱材の下端がそろうので、細工をしなくても基礎パッキンンの通気を妨げることはありません。
大引の下端と断熱材の下端には30mmの段差ができるので、大引きに厚さ30mmのネオマフォームを貼り付けます。これが大引きの熱橋防止となります。

写真のように現場ではあらかじめ大引きにネオマフォームを貼り付けてしています。

この方法ですと上の写真のように大引き下の束の部分で断熱が切れてしまいますが、1か所あたり90mm×90mm=0.0081m2 程度で6畳まで6か所=0.0486m2と全体的にはほぼ影響がないものと考えます。

【床合板柱部の隙間】

土台を120mmとしたのは、断熱材の厚さに合わせることの他に、床合板と柱部分にできる隙間の対策のためです。
床合板は敷き込むとき柱の部分を欠き込む必要がありますが、10mm程度のクリアランス(余裕)をもたせて欠き込まれます。105mmの土台に105mmの柱を乗る場合、このクリアランス部分が間仕切り壁内に床下の冷たい空気を取り込んでしまう原因になるので、コーキングや専用の気密部材で塞ぐ必要があります。
土台を120mmとすることで、合板を敷き込むだけで10mm程度のクリアランス部分の隙間をふさぐことができ、施工性が良くなります。
ただしクリアランス10mmだと105+10+10=125mmで隙間ができてしまうので、9mm未満のクリアランスに抑える必要があります。

こんな感じ

床断熱150mmと120mmでは床表面温度の違いは1度程度と考えていますが、実際どのくらい違ってくるのか、熱橋部分の温度差はどうなのか、冬の寒い時期にサーモグラフィカメラで確認してみたいです。