家づくり

UA値と快適な家の関係

新しい物件に向けて断熱仕様を検討しているなかで、UA値と冷暖房費の関係について面白い資料ができました。
単純に仕様を検討したいために作成したのですが、UA値と冷暖房費の関係が結構分かりやすいのではないかと思うのでご紹介いたします。

下の表は、外皮計算ソフトQPEXのデフォルトで設定されているモデル住宅プランを利用して、年間にかかる冷暖房費をシミュレーション比較したものです。

※年間冷暖房費:エアコン効率(COP)3.0、電気料金30円/kWhとしています。

表は右の列に行くにしたがって、UA値・Q値が低くなるような仕様になっています。
「判定」と書かれた2段の欄に注目してください。上段は熱交換を行う第1種換気の場合、下段は熱交換をしない第3種換気の場合です。
「UA」と「冷暖房費(年間)」の数値を見比べてみます。
【熱交換換気あり】
① UA=0.50冷暖房費(年間)39,514円
【熱交換換気なし】
② UA=0.44冷暖房費(年間)46,856円
③ UA=0.41冷暖房費(年間)44,155円
④ UA=0.38冷暖房費(年間)32,320円
熱交換換気ありの①と比べて、UA値の低い②③で冷暖房費が高くなっています。
さらに④までUAが低くなると、熱交換換気なしでも冷暖房費は若干安くなります。
単純に同じ仕様で熱交換換気のあるなしで見比べると分かりやすかもしれません。比べてみるとUA値は同じにもかかわらずQ値や年間冷暖房費に違いがあることが分かります。
UA値は建物の材料を伝わって逃げる熱の量を示すのに対して、Q値はそれにプラスして換気などによる損失を考慮して家全体から逃げる熱の量を計算しています。そのQ値を使用して年間冷暖房費を計算します。
そのためUA値は変わらなくても換気によって熱が逃げればQ値が大きくなり、その逃げた熱を暖房で補わなくてはならず、暖房費が高くなるのです。

換気以外にも、このような現象が起こる要因がいくつか考えられます。
一例を挙げますと、開口部の大きさや数によるものです。
ガラスよりも壁の方が熱が逃げにくいので、開口面積を減らせばUA値は低くなります。その代わり日の光が入らないので冬はその熱を利用することができず、部屋の温度を温めるのに暖房を余計にしなければなりません。結果的にUA値が下がったのに冷暖房費が高くなる場合があります。

「UA値」のキーワードで検索すると、「UA値はどれくらいにしたらよいのか」「UA値0.5ってどうなんだろう」とか「UA値ランキング」とかズラズラズラっと出てきます。中にはUA値をめぐって施工側との信頼関係まであやしくなっているような書き込みまで見られます。
売る側からすればUA値の低さだけをアピールすれば断熱性能の良さをアピールすることができるので、必死になって数値競争をします。
でも買う側がそれに踊らされてはいけません。
欲しいのはUA値が低い家ですか?それとも快適な家ですか?
いくらUA値が低くても、換気や隙間の風ですーすーしてエアコンの効かない家では何の意味もありません。
快適に生活するために大事なのは気密性の良さ、さむい風を感じない給気の位置、空気の流れ方、などのほか、動きやすい動線、適切な収納、くつろげる雰囲気など、UA値とは関係ない部分なのではないかと思うのです。

UA値と快適な家とは何の関係もありません!

廊下やトイレ、脱衣室と部屋など家じゅうの温度差が2度程度で、冬20℃以上夏27℃以下湿度が年間を通して45%~60%であればUA値が0.5だろうと0.3だろうと何の問題もないです。
これから家を建てようとお考えの方は、上のような温度の条件で年間いくら冷暖房費がかかるのかを気にしてください。
住宅メーカーでも工務店でもUA値の話を始めたら、上の条件を示して
「それで年間の冷暖房費はいくらくらいになりますか?」
と質問してみてください、その会社が家の温熱環境にたいしてどのように考えているか分かると思います。